3月 271999
 

サタデーナイト

ベトナムの人にとってカブは娯楽の道具でもある。それがもっとも分かるのが土曜日の夜のレ・ロイ通り周辺だ。ここはサイゴンの中心街、銀座か表参道といったことろで、夜はネオンが煌めく華やかな通りである。ここが土曜日の夜カブに埋め尽くされる。夕食を済ませた家族や恋人、友人同士が2人3人または4人乗りでここを流すのである。目的は(たぶん)無い。せいぜい夕涼みといったところであろう。ロータリー周辺には夜店まで出て繁盛、ヘッドライトを点けた数百台のカブがネオンの下を走る風景は圧巻だ。サイゴンでは夕涼みの散歩もカブでという事である。

カスタム
サイゴンのカブは見ているだけでも楽める。様々な改造が施されたカブが見られるからだ。カスタムには実用系と装飾系があるが、走行性能の向上を狙ったチューニング系はあまり見掛けなかった。(もっとも50ccのエンジンを70ccに載せ換える様な改造はあるかもしれない)実用系の改造としては前述のピリオン・シート、ベトナムキャリヤ、シートトランクが主である。その他、大型化された荷台やダブルシートの更に後ろに付けるキャリヤの他、レッグシールド内側に手提げを引っかけられる様にする日本でいうコンビニ・フック等が一般的。装飾系の改造にはステッカーやクランクケースのバフ掛け、中にはキャストホイールに交換している輩も。また、実用系と装飾系の中間としては各種のガード類があげられる。ウインカーやテールランプ用のガードやクランクケース用を見掛けた。装飾(金持ち)派のステンレス製のきれいなモノや実用(貧乏)派の鉄筋を曲げて造った様なものまであった。あと、金属製のサイドカバーを付けたカブも見掛けたが、あれは欲しかったナぁ。


バフ掛け


キャストホイール


金属製サイドカバー

ファッション系
サイゴンの中心街で一台だけファッション系と言えそうなカブを見つけた。ハンドルやウインカー、ヘッドライト、メーターからシート、マフラーに至るまで交換され、2トーンにペイント、レッグシールドも加工されていた。このオーナー、相当良いセンスです。


仏蘭西風カブ

チョロンのカブ
チョロンはサイゴンの西にあるチャイナタウン。ここでのカブはサイゴンと違って汚くボロく手入れがされていない。華僑にとってカブは道具でしかない様だ。油で汚れたラーメン屋の出前用みたい。これは華僑は金持ちなためカブに資産価値やステータスを感じていないためなのではあるまいか。しかし、活きたニワトリを束ねてハンドルに掛けた様子はいかにもチャイナタウンといったところ。これはこれで良いカンジでした。


束ねられた鶏

その他もろもろ
日本では車を洗うサービスがガソリンスタンド等で行われているが、サイゴンでは実質的にカブ用の洗車場になっている。その他カブを使った仕事としてバイクタクシーがある。ベトナムでは50cc以下のバイクには免許が要らないらしい。そういえばどう見ても10代前半に見える子供がカブを運転していたっけ。ヘルメット。そんな物・・・走っているカブを何千台も見たが一人としてかぶっていなかった…というのはウソ。一度だけ子供にヘルメットをかぶせて乗せている親を見掛けた。日焼け防止。女性は日焼けが嫌いだ。カブに乗る時は帽子をかぶりひじの上まである手袋をはめている。スカーフで顔を覆い目だけ出しているヒトも。


洗カブ場


長手袋

ベトナム人にとってのカブ
カブを欲しがるという欲求はベトナム人にとって共通の価値観の様だ。日本だって昔はみながテレビ・洗濯機・車を欲しがっていた時代があった。つまりベトナムの人たちにとってカブは中流生活の証なのだ。ベトナムでは他に何の財産を持っていなくてもカブさえ持てば対外的には中流の生活者になれるのだ。だから生活費を切り詰めてでもカブを買う。カブを持つことで中流意識を満足させるのである。過去に日本であった「マイカーブーム」って言葉と時代が、現在のベトナムに生きている。

カブで走るという事は…
サイゴンの交通状況、はじめは何とひどいモノ…と思ったが、今や彼らにとってホンダは足の一部になっている。ベトナム人がカブで走るのと日本人が人込みの中を歩く事は同一の行為と考えればそうした行動が理解できる。人は町中を歩くのにウインカーなんて使わない。行きたい方向に向かうのみである。しかし、急に向きを変えるときにはそばに人がいないか注意するし、人前を横切るときには手刀を切ったりする。歩行者は右側通行が原則といっても交差点では原則でしかない。こうして考えると、ビービーをじつにうるさいホーンも「ごめんなさいよ!」と声を掛ける程度の事なのかもしれない。 つまり、サイゴンの交通は日本の人込みの中での秩序と同じものなのだ。中には人の足を踏んでしまったり、ぶつかってしまったりする事もあるが、流れの中では些細な事故でしかない。ぶつかってもよほどの事が無ければごめんで済んでしまう様だ。

幸せなカブ
ベトナムのカブは幸せだ。道具として大事に、徹底的に、フルに、最後まで、永く使われている。乗りっぱなしで洗車もされず使われた上、直すよりも安いという理由で壊れたらそのまま廃棄されてしまう日本のカブとは対照的である。こき使われないまでも乗りもせず飾りになっていたり、おもちゃであったりファッションでしかないカブの何と多いことか。

その他写真


サイゴンの中心街。歩道はカブが2重に並べられている。道路はきれいだ。


夕方の帰宅風景。当然、停まっているのも走っているのもほとんどカブです。


行商のおばちゃん。ノンラー(菅笠)、PPバンドのカゴ、旧カブ。


店先でカブの修理を待つアオザイの女性。サイゴンではアオザイをアオヤイと発音する。


郊外の修理屋はこんな感じ。町中より新しいカブは少ない。

買ったモノ

  • ベトナムキャリヤ:ステンレス製で350円ほど。他、鉄に黒塗装やメッキの物もある。
  • ピリオンステップ:後軸に取り付けるタイプ。スイングアームにステップが付いていないC50に使うのであろう。チェーン引きを兼ねた構造でノーマルのチェーン引きを外して装着する。袋には純正部品と印刷されているがMade in VNとも?
  • オイルキャップ:スーパーカブがOHCエンジンになってからはすべて樹脂製であるが、これはステンレス製でバフ掛けされていた。
  • タペットカバー:ノーマルのアルミに対してより重厚?なステンレス製。
  • エンブレム:サイドカバー用の模造品。本物から樹脂で型取りしたのであろうが、ひどい造り。
  • サービスマニュアル:書店では2種類ほどみかけた。250円ほど。本屋をくまなく見て回ったがカブに関する書籍はサービスマニュアルだけ、バイク雑誌も見かけなかった。
  • コーションラベル:日本語のコーションラベルなんて現地では何の役にも立たないであろうに…と思ったが、カブにも製造国によるランクがあるのだ。もちろんタイや韓国よりも日本製のホンダの方が上。日本語のコーションラベルは日本製の証なのだ。しかし書き写したのであろう誤字の多い手書き文字には笑える。他にもタイ語のラベルも入手

行けなかった店
ムック「Cub」や藤本さんの写真にあったカブの中古部品屋街。クランクシャフトやシリンダーヘッド、果てはベアリングまで中古部品として売られている店を見てみたかったのだ今回は果たせなかった。

こうした店にも行きたかった・・・次回は是非!

1999-3-27作成

追記1:上記の仏蘭西風カブのオーナーは日本人の方でした。当地の日本食レストランの店長との事。この店でバイトしていた留学生の方がメールで教えていただきました。・・・さすがは仏領だっただけあると思っていたのですが・・・ザンネンだったりして(笑)

追記2:後で考えると、わたしたちが行ったのはサイゴンの中心地がメインである。東京なら丸の内や銀座、新宿なのだろう。こうした場所ではカブが人の移動用なのは当然である。チャイナタウン等で見かけた働くカブはもっと郊外に行けば、たくさん出会う事ができたのかもしれない。

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