9月 022012
 

前回と前々回の考察で「背開きの干物は、生産者と調理者の双方に都合が良い」と結論づけました。

しかし「背開きの干物と腹開きの干物ではどちらがおいしい」のでしょう。こんどは「食べる側」から考えてみます。

小さな干物でしたら丸ごと食べる事もできますが、ある程度以上の大きさの干物になれば、頭やヒレ、中骨を残す事になります。

ここに背開きと腹開きの鰺の干物が並んでいる事にします。どちらも丁寧に加工され、均一に火が通されている物とします。この2つの干物を食べる場合、それぞれの違いを考えてみましょう。

干物を食べる順序は人それぞれでしょうから、以後の考察は順不同という事にしてください。

中骨と尾びれ:これは背開きでも腹開きでもはがしやすさに違いはないでしょう。中骨に付いた香ばしい身が、干物のいちばんの醍醐味という方もいるのでは?

:頭の肉はマグロ等の大きな魚では頭身と呼ばれてますが、一尾丸ごと調理して食する場合、頭と体の身は連続していますので、背開きではその部分が外側になり、腹開きではその部分が内側になるだけで、火の通りが同じなら食味や食感にも差は無いと思われます。あと、頭の部分というと頬の身=頬肉がありますね。私は鰺の干物であってもここをちゃんとつ突いて食します。

背びれ:箸で背びれとそれに付いた骨を外す際は、背びれが内側になる腹開きの方が、骨の周りの身がしっとりとしていて外しやすい様に思います。

胸びれ:背びれと反対に、胸びれは背開きの方が、骨の周りの身がしっとりとしていて外しやすいでしょう。しかし、胸びれとそれにつながる骨は、背びれの骨ほどとがっていないので、食べちゃう方もいるでしょう。そうなると腹開きの方が、この部分がこんがり焼けるので、食べやすいと思います。

こうして考えてみると、食べる際の背開きと腹開きの差は、それほど無い様に思えます。しかし、背開きは厚い背の身と薄い腹身の部分が、両方とも均一に焼け、食感も均一に近い状態になるのに対し、腹開きは身はほっこりと焼け、腹身はこんがりパリッと焼けて、部位による食感のコントラストが楽しめるでしょう。結論は「お好みしだい」という事です。

「干物は背開きだろう」というわたしの思い込みが、こうした考察のきっかけとなりました。当初は「干物には背開きの方が適している」という先入観もありました。

しかし、現在は背開きと腹開きを、魚の種類や大きさ、その時の気分や食べる人の事を考えて使い分け、その両方を楽しみたいと思う様になりました。

開き方だけではありません。「今日のお客様には、食べやすい様に背びれを外そう」とか、「いっその事、中骨も外してしまおう」というアイデアも湧いてきます。

こう思える様になったのは、腹開きのカマスを買ってきて「干物にして」と言った妻のおかげです。わたしはこの時はじめて「腹開きの干物」を作りましたが、今後は「背開きと腹開きの両刀使い」になる事でしょう。

【蛇足】私がはじめて作った「腹開きのカマスの干物」は頭も開きました。出来上がりを見て「何か違う」と思ったら、カマスの干物は頭は開かずに残すのが一般的でした。この「頭を開く干物」と「頭を開かない」干物にも。理由があるのでしょうか。

【蛇足2】機械で開いたホッケの干物は、中骨が二つ切られた「真ん中開き」になってます。これができるのはホッケの骨が硬くないからでしょうか。アジやサバでもこの加工ができれば、今まで食べられなかったサイズの魚の中骨が、食べられる様になると思います。

【蛇足3】干物作りは空気の乾燥した気温の低い時期が適しています。気温が高いと匂いが出てきてしまうのですよね。これは魚を干す前に、アルコール度数の高い泡盛やウォッカをスプレーするとかなり減らす事ができます。(泡盛やウォッカに塩を足しても良いかもしれません)

【蛇足4】日経の「食べ物新日本奇行」というコンテンツに背開きか腹開きかを集計した分布図が載っていた。Net上の(失礼ながら)安直な集計だろうから、精度は?だが楽しい図だ。

 Leave a Reply

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

(required)

(required)