2月 072016
 

近ごろはあまり聞きませんが、患者の体内に手術道具を忘れて閉じ(縫合)してしまったなどという事故の話を聞いたことがあります。そこまでの事故ではありませんが、ウチのカブ(飼犬)は昨年、動物病院で鎮静剤を使った歯石除去手術を行ったのですが、翌日散歩中にしたウ○コから手術で使った綿(わた)が出てきた事がありました。

いずれも使った物を取り出し忘れた事によるものですが、機械の整備でも同様な事例が生じる事があります。そして、こうした事故をもっとも恐れているのが航空宇宙産業です。エンジンの整備で工具を中に置き忘れて事故を起こす・・・あってはならない事ですからね。

SnaponFOD

こうした事故をFOD(Foreign Object Damage):異物損傷と言い、その防止はあらゆる産業で不可欠ですが、FODへの対策はどの様な方法で行われているのでしょう。

こちらは以前に紹介したISS(国際宇宙ステーション)の工具箱です。

isstoolbox1

www.flickr.com/photos/ISS Toolbox

航空宇宙産業ではこの様に、引き出しの中に工具の形状にカットしたスポンジやウレタンフォームを入れ、整備の終了時に戻し忘れが無いかを確認する事で、工具の戻し忘れを防止しています。

しかし、人の目視による確認作業ですから『絶対にミスが無い』とは言い切れません・・・という事への対策がSnap-onのLevel 5 ATC(Automated Tool Control)システムです。

Level5ATC

工具箱の中をカメラで監視し、すべての工具が揃った状態の画像と比較する事で、戻し忘れを防止するシステムです。何をどこに置いたかを登録する事で『何が戻されていないか』まで表示する事ができます。下はYouTubeの紹介映像です。

もちろんセキュリティ対策も兼ねており、ツールボックスはIDカードで開錠しますので『誰が使ったか』や『誰が何を戻し忘れたか』も分かる様になっています。

このSnap-on Level 5 ATCシステムのツールボックスが日本にも届きましたので、触ってみましたが、工具を取り出して引き出しを閉めると『Isuued One!』、工具を元に戻して引き出しを閉めると『Returned One!』とツールボックスがしゃべります。

はじめは面白がっていましたが、使っているうちにイラッとしてきました。機械に監視されている感があるのです。これは使用者が好みの声を選べる様になると解決するでしょうね。日本仕様は女優やアニメのキャラクターでしょう。

・・・と書きながら54歳のおっさんがはじめに思い浮かべたのは『うる星やつら』『ラムちゃん』でした。

RumChan

10月 082015
 

以前に「差込角7.1mmのソケットレンチ」というタイトルで、差込角が9/32インチ(7.1mm)のソケットレンチが存在したエントリーを書いたが、Snap-onには2000年頃まで差込角が1/8インチ(3.2mm)という規格も存在した。これだけ小さなサイズなので、供給されていたソケットのサイズも3/32インチ,1/8インチ,5/32インチ,3/16インチという小さいもの。メトリックに換算すると2.4mm,3.2mm,4mm,4.8mmとなります。

snapon8div1

6月 172014
 

タイトルを見て???となる方は工具の知識のある方です。ソケットレンチの差込角は6.3mm、9.5mm、12.7mm等と規格で決まってますからね。

レンチをソケットとハンドルに分解し、両者を四角の凹凸で接続するという発想は、Snap-onの創業者のアイデアとされている。1920年のSnap-onの創業時には「5種類のハンドルと10種類のソケットで50の仕事ができる」というキャッチフレーズが使われた。

snap5x10=50

当初のモデルには1/2インチの差込角(square drive)が採用されたが、その利便性からそれよりも大きな差込角や小さな差込角の製品も作られる様になった。1/2インチ(12.7mm)の上には3/4インチ(19mm)や1インチ(25.4mm)等がある。

・・・そこでこの7.1mmの差込角である。1/2インチの下の規格として1925年に製品化されたのが9/32インチ(7.1mm)の差込角なのだ。実物がこれ↓である。

snapon932

ところで現在最も一般的な差込角である3/8インチ(9.5mm)はどうかと言うと、これが製品化されたは1927年。9/32インチよりも2年遅れての登場だ。当時は1/2インチ、3/8インチ、9/32インチが一般的な差込角だったのだ。

当時のSnap-onは製品カタログを(ほぼ)毎年改定していた。それを見てゆくと、1/4インチの差込角の製品がカタログに載る様になったのは1940年代に入ってからで、しばらくは1/4インチと9/32インチが併売されていた様だ。

それが1945年になると、カタログから9/32インチは姿を消して1/4インチだけになっている。9/32インチと1/4インチの差は0.6ミリとわずかなので、規格を整理したのだろう。そこでリストラされたのが9/32インチの差込角だったというワケだ。

機械や部品のサイズが小さくなれば、それに比例して精度も要求されるので、当初は9/32インチが採用されたのだろう。それがその後の工作技術の発達にともなって、1/4インチが取って代わる事になったのだと思われる。製造技術の進化です。

同時にこれらの工具で整備する、特に自動車をはじめとした輸送機械類の部品も、小型化が進んだ事もあるだろう。これも工業技術の進歩にともなうものだ。機械や部品が小さくなって、使われるネジ類も小さくなれば、工具も小さい方が使いやすい。こちらは使用者ニーズの変化によるものといえます。

そして社会的背景。1940年代といえば第二次世界大戦。日本による真珠湾攻撃が1941年の12月で、戦争が終わったのが1945年。戦争末期の1944年と1945年のSnap-onも軍需工場と化していたので、そうした時代背景も規格の整理につながったのだろう。

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これは1941年のSnap-onのカタログ。ミジェットレンチとして9/32インチのシリーズが掲載されている。1/4インチはまだシリーズ化されておらず、ひとつだけ”Special Midget Ratchet with 1/4″Square Drive”として1/4インチのラチェットレンチが掲載されている。そしてソケットのページにも1/4インチの製品は載っていない。この当時1/4インチは何か特殊な用途向けだったのだろうか。

【参考】
Snap-onの製品には製造年の末尾の数字が刻印されており、その数字は各年代で書体を変えてあるので対応表を見れば製造年が分かる。しかし、第二次世界大戦末期の1944年と1945年は数字でなくE=EmergencyとG=Govermmentという刻印になっている。詳細はsuper-cub.com/戦時中のSnap-onをご参照ください。

10月 122013
 

ISS(国際宇宙ステーション)の工具箱の中身です。こうしたモノには個人的にも職業柄も興味があるもので・・・
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www.flickr.com/photos/ISS Toolbox

しかし、宇宙ステーションで使うモノと言うと『特別製』で、高価な材料で造られた一品モノばかりかと思っていたのですが、意外と普通なモノをそのまま持っていっている様です。どうして「普通」なモノと分かるかというと、Snap-onの製品だからです。ウチ(勤務先)に売るほどあります(売ってます)

黒いハンドルのドライバーや、オレンジ色のハンマー、クロームメッキのレンチやソケット、赤いグリップのプライヤー類、ローレット仕上げのシルバーのグリップのトルクレンチ等がSnap-on製で、そのほとんどが鉄製の普通のカタログに載っている製品の様です。

これだけあると結構重いですよ。オレンジ色のハンマーはHBD24ですので、重量は1キロほど。こうした重いモノを、そのまま持って行くんですね。

国際宇宙ステーションの飛行高度は、280kmから460kmほど。スペースシャトルの積載能力(ペイロード)は低軌道で24,400kg。

打ち上げ費用は1回あたり10億ドルとも15億ドルとも言われていますが、ここでは10億ドルで1ドル100円換算すると1000億円となる。これを単純計算すると1kgあたり410万円。

もちろんスペースシャトルのミッションは荷物を運ぶ事だけでありませんし、有人宇宙船なので無人ロケットよりもコストが掛かるのは当然。

では、国産のH-IIBロケットではどうか。国際宇宙ステーションへの軌道投入能力は16,500kgで打ち上げ費用は110億円(目標)なので、1kgあたり約67万円。

先月打ち上げに成功したイプシロンなら軌道投入能力は1,200kgと小さいが、打ち上げ費用も安くて30億円(目標値)。しかし、換算するとこちらは1kgあたり2,500万円!。費用はH-IIBの1/4ほどだが、積載能力は1/14程度。こちらは小型で軽量な衛星を、タイムリーに打ち上げるという用途なのだろう。

このSnap-onのハンマーを、国際宇宙ステーションまで持って行く費用は、安くても67万円。さすがは宇宙プロジェクトです。

3月 292012
 

1940年代のSnap-onの1/4インチドライブのセットを入手。Snap-onは1920年代から製品に製造年の末尾の数字が刻印されている。その数字は各年代で書体を変えてあるので対応表を見れば製造年が分かる。

こちらが対応表(Year Mark)

1944年と1945年は数字でなくE=EmergencyとG=Govermmentとなっている。これは第二次世界大戦末期の例外表記。この2年間は生産のほとんどが軍用だったのだろう。1931年から1933年も数字ではないが、これはイヤーマークのデザインポリシーが固まっていなかったためではないか。現在は2029年までのイヤーマークが決まっている様だ。

ラチェットハンドルにはEが、ソケットにはGの刻印がある。