ブローバイガス還元装置とパワーダウン

スーパーカブがマイナーチェンジされた。(ホンダの広報資料)今回のマイナーチェンジは新しい排気ガス規制への適合が目的であり、主な変更点はブローバイガス還元装置の装備とキャブレターのセッティングという事だ。なお、今回は騒音に関しても規制が厳しくなっており、その対策としてドライブスプロケットにダンパーが組み込まれている。
ブローバイガス還元装置というのはシリンダーとピストンの隙間からクランクケース内に漏れた未燃焼のガスと排気ガス、それにクランクケース内で発生した霧状のエンジンオイルが混ざったガス=ブローバイガスをエンジンに吸い込ませる仕掛けであり、これまでのカブはこうしたブローバイガスをそのまま外に放出していたのである。

エンジンにとってブローバイガス還元装置は大気汚染を減らす事が目的の装置であり、エンジン出力にとってはマイナス要素である。従来のエンジンは常にきれいな空気を吸っていられたのであるが、これからは汚れたガスを再び吸わなければならなくなったワケだ。まあ、自ら出したガスであるのでこれは仕方なかろう。

こうした装置の装備と付随したキャブレターのセッティング変更によりエンジンの出力は従来の4.5PSから4.0PSへと低下した。ただしこの数値だけを見て「遅くなった」と思うのは早計であろう。最高出力というのはトルクと回転数の積であり、エンジンを目いっぱい回したときの値である。つまり普通の乗り方なら最高出力の出番は極めて短時間でしかないのだ。

ホンダのやる事である。「排ガスの規制が強められたせいで遅くなってしまいました」などという事はないだろう。最高出力値が低下しても最大トルクの発生回転数に変化はないのでドライバビリティに数値ほどの変化は無いハズだ。もしかしたらカタログスペックの呪縛が解かれ、従来以上にトルクバンドが太くなりかえって乗りやすくなっているかもしれない。←最大トルク値も1割ほど低下しているのでかなり希望的観測(^_^)

このあたりの事はエンジンの出力曲線図を見れば大体解るのだが、昨今のカタログにはこれらの図が載らなくなって久しい。もっとも数値云々よりも乗って試してみる事がいちばんであるのだが、カブの試乗車なんてあるのだろうか? バイク雑誌にスーパーカブのマイナーチェンジモデルの試乗記事が載るとも思えないし…

いずれにせよユーザー側の意向とは違うベクトルであろうと、各種の規制に合わせるための変更はこれからも続いて行くだろう。以降に予想されるのはガソリンタンクから放出されるガソリン蒸気の蒸散防止(回収)装置や、排気ガスに含まれる未燃焼ガスをエキパイに空気を入れて燃やす2次空気導入装置、それと触媒(キャタライザ)あたりか。

環境や時代に合わせて変化する事は大切ではあるが、ホンダには規制への適合や時代への迎合ではなく主体的な革新を期待したい。一般ユーザーに「歩行者が気づかないので危ない」と言われるくらい静かなエンジンとか、ディーゼルエンジンのバスよりも環境にやさしいスーパー”エコロジカル”カブなんてのはどうだろう。ところで、来月の東京モーターショーには電動の”E-カブ”とか電気とガソリンのハイブリッド車”スーパーカブ・インサイト”とか出ないのかしら。←期待大(^_^)

補遺 1999/9/19
今回マイナーチェンジされたのは50ccのスーパーカブとリトルカブである。70ccや90cc等の原付2種(の現行機種)にこの新排ガス規制が適用されるのは来年、平成12年の9月1日からなので70ccや90ccにブローバイガス還元装置が付くのは来年になるのではないだろうか。また、今回のマイナーチェンジでビジネス仕様がカタログ落ちした。ビジネス仕様はスタンダード仕様と差が少なく販売数も少ないだろうから統合したのだろう。これで走行中でも3速(Top)からニュートラルに入る(旧)ロータリーミッションというビジネス仕様の特徴が欲しいユーザーはプレスカブという選択をする事になるのだろう。

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