1958年に発売されたスーパーカブC100の派生モデルとして、1962年にポートカブC240が発売された。製品の位置付けはスーパーカブの普及版。変速機も2速のみとなっておりこのモデルによりホンダは一家に1台のスーパーカブから家族ひとりひとりに1台のカブにまで普及させようと考えたのである。
パーソナルモデルとしての商品性は当時の販売カタログにも見てとれる。スーパーカブは一家の主の通勤や自営業者の配達といった情景の写真であるのに対し、ポートカブはセーラー服の高校生が荷台に学生鞄を載せて自宅を出て行こうとする風景だ。 “ポートカブ”
つまりは女性をターゲットとしたバイクである。ホンダはこのポートカブで潜在する女性ユーザーの掘り起こし、否、需要の創造に挑んだのだ。
しかし、結果としてホンダの目論見は外れた。時代が早すぎたのであろう。この狙いはポートカブから14年後の1976年、ロードパルの発売で開花する事となる。
そして1997年、ホンダは巷のカブ人気を察して女性、それもバイクにはじめて乗るようなユーザーを取り込む事を狙ってリトルカブを発売した。これは2年ほど前からホンダの子会社がオプションパーツとして販売してきたカブラキットの好調もあっただろう。
価値観の多様化した現在、以前の様な大流行、単一機種の大量販売は望めない。これはホンダ自身百も承知だろう。そこに女性向けのカブである。
以前から車の世界では女性向けの仕様は売れないと言われてきた。それは販売結果が証明している。しかし、現在はどうだろう。軽自動車や小型車では女性仕様が引きも切らず発売されている。現代はもう自動車さえ耐久消費財としてよりファンシーグッズとして消費される時代なのだ。
リトルカブは女性向けのカブであるが正に今の時代のカブだと思う。ポートカブでもロードパルでもない。個人的な好みは各人で異なるだろう。だが、時代はこのリトルカブをどう評価するのか。見守って行きたい。