今年も9月30-10月1日の両日、ホンダのエコラン大会「第20回本田宗一郎杯ホンダエコノパワー燃費競技全国大会」の市販車(2輪車)クラスに出場した。前回まではOHVのC100で出場していたが昨年はリタイヤして悔しい思いをしたのに加え、一緒のチームで出場した友人がOHCのマニュアルミッション車(SS50)で6位に入賞。羨ましい思いまでさせられたので今年は入賞を目指しOHCのC50でエントリーとなった。
車両は近所のおじさんにもらったC50カスタムのフレームに、これまた静岡の方からいただいたC50カスタムのセル付きエンジンを載せた貰い物仕様。これをベースに入賞を狙った改造を施していった。
カスタムのフレームを使ったのはリアフェンダーが取り外せるため。けれどハンドル回りは角目では格好悪いので部品交換会で見つけた丸目のハンドルを取りつけた。知らなかったけど、丸目と角目ではハンドルの太さが違う。その他にも不要なパーツは、できる限り外して軽量化と空気抵抗の軽減を図る。ホイールは昨年同様空気抵抗の軽減策として、スポークホイールにカバーを取りつけた。昨年はプラスチック(塩ビ)の薄板を貼ったが今年はより軽量なスチレンペーパーとした。
ホイールには通常、ボールベアリングからグリスが流れ出ない様にオイルシールが使われている。このシールはシャフトに常時接触していて抵抗となるため、取り外すか接触しない様に改造。また、スピードメーターギアも抵抗となるため取り外し、スピードは自転車用の非接触式メーター(サイクルコンピューター)を使用する。このあたりは前回の仕様と同じである。またタイヤも前回同様ダンロップのソーラーカー用タイヤを使用した。
エコランで好成績を狙うチームのエンジンには、基本的とも言える改造がなされている事が多い。それはバッテリー点火と吸気カット、それにミッションのギア抜きである。
バッテリー点火というのは、点火のためのエネルギーをバッテリーから取る点火方式。ノーマルのカブはクランクシャフトに取り付けられた交流発電機を回して得られた電気を使って点火しているので、バッテリー点火に改造するとこの重い発電機を取り外す事ができるのだ。しかし、バッテリー点火への改造はノーマルカブの点火システムの構成部品、CDIユニットやイグニッションコイル等をすべて交流用から直流用に換えなければならない。カブ系のエンジンに直流CDIの点火システムを使った車種など無いため、使える部品探しが一番の難点なのだ。FTR250のユニットが使えるとの情報までは手に入れたが、時間と費用の関係で今回はノーマルの点火システムのままとした。
吸気カット装置というのは、文字通り吸気をしない様にする改造。エコランはある程度の速度まで加速してからエンジンを止め、惰性で走るという走行パターンを繰り返す。今回うちのチームは10回ほどエンジンの始動と停止を繰り返した。エンジンの停止は通常イグニッションスイッチをオフにして点火を止める事で行うが、エンジンは点火を止めてもしばらくの間、慣性で回りこの間もガソリンを吸いこんでしまう。そこで吸気バルブを押しているロッカーアームをスライドさせて吸気を一瞬で止める機構とするのだ。
吸気側ロッカーアームのスラスト部をシリンダーヘッド側と共に削り、ロッカーアームが吸気バルブを押せなくなるまでスライドする様に加工。スライドをコントロールする方法は色々考えられるが、私は穴を空けたロッカーアームにワイヤーを通して引っ張る方法を選択。この頃はリューターも持っていなかったので、グラインダーやヤスリを使ったり、ロッカーアームの穴空けには超硬ドリルが高価なためコンクリートドリルを使ったりして苦労したが、エコランの掲示板やオフ会での情報がとても参考になった。
ミッションのギアは、エコランの走行パターンだと変速の必要が無いと考えられているため、3速または4速だけを残し他のギアは抜いてしまう。こうすると軽量化に加えて摺動抵抗も減りスムーズに回るようになる。残されたギアで加速し、エンジンの停止と共にニュートラルにシフトして惰性で走るのだ。
しかし今回私は2速固定とした。ミッションでの減速比が大きいほどドライブスプロケを大きくでき、チェーンの屈曲を小さくできると考えたのだ。また、今回はシフト機構をすべて排除する事を試みた。ドライブスプロケットの取付部に自転車のフリーホイールを組み込む事により、ミッションを操作してニュートラルにする必要を無くしたのだ。これは2年ほど前から構想し市販のワンウェイクラッチを購入してみたりしながら手持ちの道具で加工できる方法として採用したもの。旋盤やフライス盤が使えればもっと良い方法も実現できるがドリルとグラインダーしか無い状況での選択である。しかしシフト機構の排除はかなりの軽量化となる上、昨年のミッショントラブルのトラウマから逃れるためにも是非実現したかった改造なのだ。
その他、シリンダーやシリンダーヘッドの冷却フィンを削り取ったりシリンダーヘッドの空洞に水を溜められる様に改造して燃焼室まわりの保温を図り、シリンダーのベースガスケットを薄くすることで若干の圧縮比のアップも行った。また、これも好成績には必須の改造となっている、始動性向上のためのツインプラグ化も設備と費用の関係で断念。昨年同様中心電極が細く、始動性が良いと言われるイリジウムプラグに託する事に。吸排気系ではキャブはメインジェットの小径化と燃料経路の単純化のため、燃料コックとフィルター機構を取り外し、排気管を内径13mmのパイプとした。
以上、これらの改造は自身の能力をはるかに越えた仕事量にも関わらず、マシンを前にすると想像力(妄想?)が止めど無く肥大し、マシン造りを程々に押さえる事のできない悪い癖が今年も出てしまい、マシンが完成したのはイベントの2日前、セルが回りプラグに火が飛んでいるのは確認したが、テスト走行無しでのTRもてぎ入りとなった。(続く)