9月30日は公式練習と記録会。我々のチームはその前に行われた車検でいきなりつまづいた。車検員に排気管が長すぎることと燃料タンクのホルダーが付いていない事を指摘されてしまった。排気管はレギュレーションに従い数センチ切断。燃料タンクホルダーも付け忘れていただけなので装着して再車検を通した。
恒例(苦笑)のトラブルはこの後に訪れた。エンジンは無事に掛かったがクラッチが切れないのだ。原因はクラッチまわりしか考えられないので早速カバーを外してクラッチをチェックしてみるが異常が見つからない。再び組み付けてみても症状は同じ。今度はクラッチを完全にバラしてみるとクラッチ板にオイルが行き渡っていない様。原因はこれかと再び組み付けるも症状は変らない。このクラッチに自分が手を加えた部分を再度思い起こしてみたら・・・ベアリングだ。
クラッチ本体とクランクシャフトの間にはベアリングが入っている。ノーマルのカブはこのベアリングは油溜まりのあるメタル軸受けなのだが、摺動抵抗の軽減を図るつもりでこの部分にローラーベアリングを入れていたのだが両者の微妙な寸法差によりクラッチのロックナットを締め付けるとクラッチとクランクシャフトが固着してしまう事にようやく気付いた。
さてどうする。ノーマルに戻すのが常道なのは分かっているが今回に限ってノーマルパーツを持ってきていない。他のチームを回って探すには時間も足りない。すでに練習走行の時間は終っている。最後の手段として選んだのはクラッチのロックナットを緩めたまま組み付ける方法。通常なら怖くてできない方法だがエコランのエンジンの運転時間は数分程度である。ロックナットの緩み止めワッシャーにすべてを託してトラブルの解決をみた。
この日の夕方に行われた記録会ではもてぎのオーバルを2周。記録は122km/lとこれまでのOHV車にも劣る結果である。ドライバーに聞くと加速が悪いので目標速度までの到達に時間が掛かってしまっているとの事。これにはエンジンのパワー不足とギア比が高すぎる事が考えられるが、ギア比はそれほど高くないハズ(1000rpm:7.76km/h)である。
原因はまたもや自分の改造の様なのだ。エコランにノーマルのエンジンではパワーが余ってしまうと考えてた私はエンジンが全開にならぬ様キャブレターのピストン部に5ミリのストッパーを入れていたのだ。どうやら5ミリでは厚すぎたのだろう。このあたりはテストさえしておけば適性値が見つかるのだがぶっつけ本番の様な状況で適正値など分かるはずも無い。翌日の決勝ではストッパーは一切無くしてノーマルの状態に戻す事にした。
本番はオーバルを3周。ドライバーがなかなか帰って来ずタイムアウトを心配したが無事完走できて満足。皆で完走を祝ってスパークリングワインで乾杯し仲間が作ってくれたランチを楽しんだ。暫くして出た暫定結果は何と252km/lで5位。念願の入賞だ。タイムは規定時間の990秒ぎりぎりの980秒であった。しかし、これまでのバタバタを考えればこの結果はマシンよりもドライバーのテクニックと判断の賜物だったのは明らかだ。今回は自分自身も(ほぼ)ノーマルのカブで初めて出場しドライバーの難しさ(と楽しさ)を体験できたのでそれが良く分かった。
さて次回はどうしよう。ドライバーの話を聞くとセッティングと練習だけでも300km/lが狙える様な気がしているが、走り終わったマシンを目の前にするとまた改造の虫が騒ぎ出してしまうんだな(笑) ツインプラグ化は無理としてもバッテリー点火にはしたい。後は細かな部分の見直しをして次回のエコランでは他チームのマシンをゆっくり楽しみたいものだ。
こちらは常勝チームのホンダ熊本製作所。ご存知のとおりカブを作っている工場ですのでまさにファクトリーチーム。アルミのフレームにプラスチックのシートを張って、空気抵抗を減らしています。記録は450km/lほどでもちろん1位。