先日、友人の50ccのカブ(C50)にCD90のエンジンを載せた。私はこれまで90ccのカブ(HA-02)を何台か4速化してきたが4速化だけでなく排気量アップまでするとなるとエンジンやマフラー、キャブ等はもちろん(完璧に仕上げるためには)CDIも90cc用に換える必要がある。そのため費用を考えると中古のCD90を手に入れた方が安く済ませられるのだ。
もちろんこの改造をするとカブの特徴のひとつでもある自動遠心クラッチが失われて手動操作のマニュアルクラッチになってしまうのでこの辺りは考え方や好みが分かれるところでもある。
エンジン
搭載自体には大した問題は無いがクラッチアームがリアブレーキのストップランプスイッチのホルダーに干渉するのでホルダー側を少し削る必要がある。また、エンジンからの配線とC50のメインハーネスのコネクタは形状が異なっていたので今回はジェネレータをC50の物に交換して対処。フライホイールはC50とCD90では点火時期が異なるためCD90のものを使用する事。
キャブ
まずはインテークマニホールド。CD90用はカブ用よりも長くてエアクリーナに合わない。またC50用は内径が細いのでこればかりは90(HA-02)用を購入して使用した。
キャブ本体も問題がある。燃料コックとニップル位置である。CD90に限らず一般的なバイクの燃料コックは燃料タンク側にある。ところがカブの燃料コックはキャブと一体になっているのでCD90のキャブを使うと燃料コックが無くなってしまう。またCD90のキャブはガソリンの取り入れ口がキャブの上部に付いているためタンク位置の低いカブではガソリンが上手く流れないのだ。
こうした問題への対処には90(HA-02)のキャブを使用すれば簡単だが私はキャブの改造を行った。まず燃料コックはC50の燃料コック付きフロート室に交換すれば解決。そしてキャブ本体の燃料経路を穴あけ加工と穴埋め加工してカブ用のキャブと同じ用に改造すれば適合化は完成。
あと、現在のカブのチョークはハンドル左側で操作する様になっているがCD90のはキャブに直接レバーが付いている。今回はそのままCD90式として余ったチョークワイヤーの経路にクラッチワイヤーを通す事にした。
ハンドル回り
当然ながらマニュアルクラッチになるためカブのハンドルにクラッチレバーを付けなければならないのでクラッチレバーとコンビネーションスイッチ一体レバーブラケットはCD90の物を使用した。
カブとCD90ではハンドル径が異なる。丸目のカブは20ミリだがCD90は22ミリなのでハンドルに1ミリ厚のアルミ板を巻いてレバーブラケットを取り付けた。この際カブのハンドルカバーにクラッチレバーが当たるのでカバーの鉄板をカットする必要がある。
また、レバーブラケットの幅がCD90用とカブ用では異なり、カブにCD用を付けると5ミリほど隙間ができるので見てくれを考えるとここを何かで埋めたいところでもある。クラッチワイヤーはチョークワイヤー用の穴を通し途中からレッグシールドのスリットを通してクラッチアームにつなげた。
なお、CD90のクラッチレバーブラケットにはディマー、ホーン、ウインカーのスイッチが一体なのでウインカーはノーマルのまま右側の上下式スイッチのままで使用する事も一般的な左側の左右式スイッチとする事も可能だ。あと、配線はコネクタの形状が異なるため適合化が必要である。
CDI
今回手に入れたCD90はサイドスタンドを出したままではエンジンが掛からない様になっていた。そのためサイドスタンド部のスイッチからの配線がCDIにつながっているのでこれにも対策が必要。またコネクタ形状も異なるので加工する。それにしてもCD90のCDIはC50の倍ほどの大きさがあるのはなぜだろう。
その他
スプロケットやキックアーム、ステップ、ブレーキアーム、マフラー等はCD90用を使用。エンジン側のクラッチケーブルブラケットとクラッチケーブルにレッグシールドとサイドカバーが干渉するのでその部分を削る必要がある。
おわりに
C50のスピードメーターは60km/hまでしか表示されないので乗り方によりメーターの交換も必要だろう。あと50ccと90ccではリム幅やタイヤのサイズも異なるので注意。
カブにCD90のフロント周りを移植する方もいるが私はサスペンションの性能よりボトムリンクのデザインを好む。また、キャブの加工等面倒ではあるがこうした作業で余ったC50のエンジンやその他の部品をCD90に取り付ければ狼の皮をかぶった羊のできあがり。ベンリー90の皮をかぶったカブ50だ(笑)