スーパーカブは40年以上も前の1958(s33)年に発売されたが、基本的設計が素晴らしかったため、そのデザインは現在も引き継がれている。このオートバイでもモペッドでもない、不思議かつ素晴らしいデザインはどの様にして生まれたのであろう。
スーパーカブは1956年に、本田宗一郎とパートナーである藤沢武雄が、ヨーロッパの視察旅行中に発案され製品が企画された。車体のデザインは本田自身と造形室のスタッフによるものである。その際、スーパーカブのデザインに大きな影響を与えたのは、NSU社のQUICKLY(クイックリー)であると見て間違いないだろう。下の写真は、ホンダ・コレクションホールが収蔵する車両です。
NSU社はドイツのメーカーで、クイックリーは1950年代にヒットしたペダル付きのバイク(モペッド)。本田と藤沢がヨーロッパに視察に行った頃は、市中を数多く走っていたハズである。きっと2人もこうした風景を目にした事だろう。しかし彼らの目にこうしたモペッドは、庶民の生活に密着してはいるが、デザインも性能も自転車の派生品の域を出てなく、モペッドとオートバイの間には大きな需要が存在すると確信したのだ。
そのNSUクイックリーは、鋼鈑をプレスした優美な車体で、泥ハネを防ぐフェンダーは大きく車輪を覆っているばかりでなく、レッグシールドまで装備されている。そしてフロントはボトムリンク式のサスペンションである。コレクションホールの展示車のハンドルはパイプ製だが、ライトと一体となったプレスハンドルも存在した。また2トーンの車体色も、スーパーカブにイメージが引き継がれているといえよう。
どうやら2人はヨーロッパからNSUクイックリーを持ち帰ったようである。そして本田と開発陣は、模倣に終ることなくデザインを立派に消化し、はるかに性能の越えたスーパーカブを造りあげたのだ。わたしたちはカブを見慣れすぎてしまっているが、発売された当時の人たちはカブにヨーロッパの香りを感じたのだろうか。
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